風の落し物

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zoom RSS Destiny −脱毛症− 1

<<   作成日時 : 2007/07/28 21:18   >>

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 この物語は、俺がまだ小学校5年生の頃に遡る。運命とは、字にしてみれば美しい物であるが、リアルに在る運命なんて物は決して笑顔で乗り切れる物ではない。それを小学校で痛感した事は、きっとこの先俺の武器になってくれると思う。俺はあのときから、この病気と戦って行くことを神に“運命”として授けられた。誰も見ていないところで独り、ひっそりと泣いた事は、今でも良く覚えている。これから先も、この体験は絶対に忘れないだろう。いや、忘れちゃいけないのだと、俺は思う。


 青く澄み切った空を、俺は見上げて居た。背負っているのは黒いランドセル。まだちょっと肌寒い春の気温が、俺の世界を通り過ぎて行く。一年生では逃したものの、二年生では真冬も半袖半ズボンと言う寒そう度絶頂の格好で皆勤賞を受賞した俺は、もちろんこんな春先の寒さなど屁でもなかったから、やっぱり半袖半ズボンで居る。そして俺は今、学校へ一緒に登校する友達4人を待っている。時間に几帳面だった小学5年生の俺は、5分前にその集合場所(俺の家の前)にて待っているのだが、大抵しゃべりながら来る友達4人は集合時間5分オーバーで待ち合わせ場所に到着する。たまに先に来て俺を呼びに来る事もあるが、なら毎日ちゃんと来て欲しいものである。
「大野!」
 少し遠く。待ち合わせ場所から歩道に出、左を向くと奴等が居た。丁度30メートル程先のポストの横を通っていた。わりと一人を好む俺は自ら友達へ向かって駆け出す様なことはせず、ただぽつりと返事もしないで突っ立っていた。正直言って、この頃の俺は暗かった。(自分的にね)
 俺の前を通り過ぎる友達一向の後ろに自然と混ざる。何気なく会話を聞いていれば、なにやら自分たちで物語を作っている様だった。登場人物が主人公と敵しか居ない駄作であったが、俺もその製作に加算する。
「僕と直人君が主人公で、正太と大野とカズが敵ね」
 物語の設定を述べ始めたのは、俺より一つ学年が上の直太君である。さすがに一つ学年が上と言うだけあって、他の奴等よりも面倒見が良く、俺の母親からも好印象を受けている。
「お前等敵なんだから少し離れろって」
 どうでもいい拍車をかけるのは、直太と共に本物語の主人公を納める直人だ。やたら名前が被る点、台本に載せたら面倒臭そうだ。直太君と違って子供の意見をする直人だが、俺とは小学校二年生の頃から友達関係を築いている。
「なんでよ!」
 ちょっとした事で怒り始めるのは直太君の弟、正太。通称まっさんである。まっさんは俺と直人よりも学年が二つ下で、まだまだやんちゃなベイビーである。大体直太君と直人がタッグを組み、俺とまっさんをはぶいて遊ぶ為、俺とまっさんはそんな行為にどこか腹を立てている。しかし、年上の直太君に反抗できるのは、少しばかりだが直人のみ。まっさんも弟と言うポジションで反抗できるが、所詮はまだ3年生。6年生の相手にもならない。
 そんな黒々しい枠から一人はみ出しているのは、カズであった。なにをしているのか理解していない様で、今はすっかり黙り込んでいる。たまにまっさんにちょっかいを出しまっさんに怒られ、怪しい笑みを浮かべる生意気な奴だ。黙り込んでいるのはどうせこの話題の最中だけで、人通りの多くなる学校の手前ほどになるとこいつの本性は明らかになるだろう。
 と、年齢層もバラバラな友達4人組と一緒に小学校へと登校していた俺。今思えば、この枠組みの中で、幼い俺にストレスが溜まっていたのかも知れない。どんなに直太を引き付けようと、結局最後は直人と組んでしまう。進歩しないこの関係は、あの病気の引鉄となっていたのかもなと、今になって思う。
 学校の手前まで来ると、カズが暴走し始めた。カズはいきなり、世にも奇妙な奇声で自作の歌を歌い始める。その歌に登校中の全ての生徒が注目するのだ。さらに、カズは知り合いだろうと初対面であろうと、見境無しにちょっかい攻撃を繰り出す。よくそんなんで上級生を怒らせないよな、と不思議に思うが、一年生の黄色帽子を被ったカズの幼さ故に、皆心を許してしまう。そしていつしか、カズは校内でも有名な不思議人にカテゴライズされることとなるだが……。
 直太君、まっさん、カズとは教室の階が違うため、俺と直人の二人で教室に向かう。俺と直人は別のクラスだが、やはり5年間の友人関係故に会話が弾む。二人きりのときだけが良い奴、というところはつくづく勿体無い。
 俺は5年2組で、出席番号順の席で一番右の前から三番目の席。そこに重たいランドセルと共に腰を落ち着かせる。最上級生として扱いも精密機械並みの6年生の教室を夢見て、俺は今年装着された扇風機に思いを寄せる。

 髪の毛が風に揺れ、虚空を踊る。細くやわらかなこれは、この頃の俺の日常には当然の様に存在していた。
 この一瞬を、もっと大切にしていれば良かったと、未来の俺は後悔に浸る事だろう。
 小学5年生の春。
 俺の戦いは始まった。

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