風の落し物

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zoom RSS 3000HTキリリク 読み切り) 「かみさまのネガイゴト と 空に響いた俺の願い」

<<   作成日時 : 2007/06/02 12:25   >>

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 俺は生まれこの時まで、ただの一度すら飛行機、つまり空を飛んだことがない。原因は、まず両親共に遠出するのが面倒臭いらしく、あまり外出することが無いからだ。もう一つ、それは両親の実家が都合悪く二つとも電車で簡単に通える所で、便利っちゃあ便利だか、以上のことが原因となり俺は空を飛んだことは無いのだ。ハイジャックとか恐いじゃない、とかぬかしているが、俺には言い訳にしか聞こえないね。
 夏休み明けともなるこの頃のでは、当然話題も夏休みに行った所の話題に決まりであり、夏休みに遠出をしなかった俺には話しのネタが無い、と言うことで苛立ちが湧く。その上飛行機の上から見た絶景! とかなんとか言われると無償に腹が立つ。どうしてうちの親はこうなんだ!とね。
 クラスメートは初めて飛行機に乗ったらしく、空から見下ろした景色を熱心に語ってくれた……いや、語りやがった。最初は慣れなくて気分が優れなかった様だが、段々と慣れてきたらしい。窓から見下ろした景色には日に照らされる紺碧の“海”が、見上げればいつもより一層と燦然に輝く“太陽”が。ふっと視界の隅を横切った物を追ってみれば、それは普段に見る物とは場違いなほど存在感を持った“雲”であり、それら全てのピースをはめ込めば、そこには偉大な“空”が在った、らしいね。
 くっそう。俺だっていつかこの目で見てやるぞ! その“空”とかいうのにな!
 と試みようが、果たしてそんな日はくるのだろうかね。
 そう。俺はいわゆる、俺流の退屈な日々を過ごしていたのだった。
 叶うはずの夢を、途方も無く追い続ける無力な俺に、むかついていた時期もちょうどこの頃だったと思うね。
 そうさ。この秋、俺の世界が崩れてゆくことも知らずに。



 3000HTキリリク  かみさまのネガイゴト と 空に響いた俺のネガイ



 その夜。部活動での疲労を只管ベッドと闇に垂れ流しているのは俺であり、11時を回った時点で消灯を決意した。
しかし、クラスメートの自慢話(俺にとっては十分な自慢だ)を思い出すと、思わず虫唾が走る。虫唾を飲み込みながら空を見つめると、口の中から歯軋りと言う名の雑音がなりだす。愚痴ばかりを心に刻み込み続けていようと何もできない自分に腹が立つ。ああ、大空を自由に駆け巡る鳥になりたいね。なんなら蝶でも……よかねぇか。(俺はあくまでも大空を飛びたい)
てかとにかく空を……飛びた……い……
 
 そこで意識は途切れた。
 途切れるはずだった。
 





「のう、朝よのう」
「うんおきる」
 そしていびきが闇を揺らす。
「のう」
 無反応な俺の腹に衝撃が走った。目覚めとしては最悪であろう部類に片足を突っ込んでいる目覚めに遭遇した俺はたちどころに布団から転げ落ちる。
「うげぉ……なにすん、だ」
「腹を踏みつけた。主がおきないのが悪いのう。“じごうじとく”というやつだの」
 自業自得ってな、俺は寝ていただけだぞ? と口にする前に、俺の目は普段よりも一回りほど大きく開いた。

「妾の名は……そじゃの、主等の言葉だと、かみさまだのう。主の願い、ひとつくらいなら叶えてやらぬこともないがの?」

 目の前には、銀色の髪と銀色の目を持つ、思わず見惚れてしまうほど美しい女がいた。身長は俺と大して変らないくらいな癖に、その存在感は掠れる様に僅かしか無い。それでも神々しい眼差しに瞳を貫かれると、体の力を吸い取られる様な気分で立つ事が出来なかった。
 そう。彼女が“かみさま”だとしたら。




「……願いが叶う?」
「主がすこーしばかり、妾のお手伝いをしてくれればのう」

 窓が開いていた。夜風に靡くカーテン、その隙間から漏れる月明かりがその“かみさま”を照らしていた。神様ってのは、もっと神々しくて、白い布を纏っているものとばっかり思っていたが、その自称“かみさま”は黒くやたらと露出の激しい服装だ。ちょっと目の毒だったりする。
 手伝い、か。
 願いに飢えていた俺に、もはや選択肢は残されてはいなかった。
 自分の頭を疑うよりも、
 目の前の“かみさま”を信じることしか、出来なかったんだ。

 空を飛べると、無理矢理心に刻み込んで。




 *





 さて。起こされた時間は夜風が吹いていたわけで、朝でもなんでもない深夜だ。11時に寝て今は3時。中途半端な時間に起こしてくれたおかげで、俺はこの先眠ることはなかった。
 願いが叶う。その一言によって動いた俺の心はただ前に爆走するだけで、止める事はできない。
 かみさまはお手伝いをしろといっていた。内用は、

「探し物を頼みたいのう」
「探し物、ですか?」
 ついつい敬語を使ってしまうが、妙なことで機嫌を損ねてしまっては人類存亡の危機に繋がりそうだ。
「そう。探し物とは一輪の花」
「花?」
「そう花。最近はあまり見かけなくてのう、少し寂しいのう」
「それを見つけてくれば、なんでも願いを叶えてくれるんですよね?」
「無論。妾に任せておればちょいのちょいだのう」
 花か。花なんて世界中に数え切れないほどある。とりあえずヒントでも……
「あの、なにか手がかりでもありませんかね?」

 そして、自称かみさまは実に不可解なヒントをくれたのだった。

 そう。




 燃える花だと、彼女は言った。



 いや、花だって植物だし、逆に燃えない花を探す方が難しいぞ。まあ、ものは試しに。
「この花、燃えますけど?」
 自分の部屋に飾ってある花を一本とって、かみさまの前で揺らして見せた。しかし、
「ちがうのう。ぜんぜんちがうのう」
 まあ予想通りの結果として、ぜんぜんちがう、か。もっと特徴的な花ってことか?第一、燃える花なんつーアバウトなヒントが役に立つわけがないだろうに。ってか、かみさまならなんでも出来るんじゃね? 銀色の目なんて、ね。カラーコンタクトにしてはあまりに透明で、あまりに可憐なその瞳を見ればかみさまだってのも納得してしまう。
 そしてかみさまは、

「妾は眠い。あとは主に任せる故、頼んだぞ」

 大きな欠伸をすると、
 煌く透明な、
 銀色の目が、
 俺を見据えた。






「げーむすたーと、だのう」








 そして自称“かみさま”は、俺の目の前から消えた。
 座り黙りこくっていた俺の手元に、“るーるぶっく”と書かれた巻物を残して。










 いつもは大好きなあの空は、
 今宵は何故か、嘲笑している風に見える。
 俺と言うプレイヤーを見下ろして、
 裂けんばかりに口を広げ。

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……(゜Д゜)………ハッ!(☆Д・;)
あひゃりひょひゅほひゃひひゃんひょうひへ(あまりの凄さに感動して)
あひょひゃひゅへひぇひはいはひは!(顎が抜けてしまいました!(見難い
リク答えてくださってほんまあんがとーございましたっっ(土下座
すごく素敵なお話でしたよぉ〜(´∀`●)ノシ
杏奈
2007/06/02 18:48

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